0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

A子とB子の予感とタイミング

「ブスとかデブがいるから美女が可愛く見える。
大半の男にとっての世界には必ずブスやデブな女がいる。そして10人や100人に1人ぐらい可愛い女がいる。こういう女はとびきり可愛くてモテるんだ。
でもその周囲の男のスペックもそんなに高くない。
そして満足のいかない可愛い女は主戦場を変えるのだ。それはハイスペックな男がいる楽園。しかし、その楽園が楽園でないことにすぐ気づく。
自分以外のみんなも可愛いからだ。
しかも、男1人に対して女10人ぐらいが群がっている。
あれだけモテていたのに主戦場を変えるだけでモテなくなる。
可愛いって相対的なものでしかないんだねって女が気づく」

仲田健作は言った。
僕は彼のことが嫌いだ。
言葉の選び方から女性を蔑視するようなひねくれた思想、身の程をわきまえない上から目線。そのどれをとっても彼に情状酌量の余地はなかった。


仲田健作は公認会計士をしている。
早稲田大学を出て資格を取得後、有名な会計監査事務所で働いている。

ここはスターバックス
彼が好んで指定する場所だ。
彼はその毒舌とは裏腹に生粋の甘党である。
今日もキャラメルフラペチーノを頼んでいる。



僕はよく考えたふりをした後に言った。

「僕には分からない。悪いけど」

彼は鼻で笑う。そしてストローでフラペチーノを飲む。

「だいたいさ、ハイスペックな男からすれば可愛い女を他の可愛い女と差別化を図れないんだよ。
ブスとかデブと比べたら当然、差別化できるけど、寄ってくる女みんな可愛くてスタイルがいいからどれも良くてとてもじゃないけど選べやしない。
だから結婚しても不倫しない自信がない。多分、モテてる男はほぼ100%浮気してんじゃねーか?」


「それは偏見だよ」
周りの女性客の目を気にしてひとまず否定してみる。


「時計に例えてみろよ。ロレックスもオメガもカルティエフランク・ミュラーもそれぞれに良さがあるだろう?どれか1つに選ぶなんて酷じゃないか?」


「時計の話もよく分からない」



仲田健作は年内に結婚したいらしい。
女はイヤほど寄ってくるらしいが、1人に決められないらしい。
どうも僕が既婚だというだけで相談を持ち掛けてきたようだ。


「僕は昔からの幼馴染みと結婚してるから、モテるという状態も分からないし、女が複数寄ってくることもなかった。だから申し訳ないが、何もアドバイスできることはない」


「そうだったな。お前は幼馴染みと結婚したもんな」

そう言ってまたフラペチーノをストローで飲む。
手に持たずに顔をそのままストローの所まで近づけてキリンのように飲む。



「A子との身体の相性は抜群なんだ。膣の締まりもいいし、身体のラインが美しい。でも話しててそこまで癒されない。射精をした後の快感しか彼女に対しては抱けない。
反対にB子はA子ほどの身体ではないが、よく笑うんだよ。その優しい笑顔にとても癒される。
どっちと結婚したらいいだろう?」



「それは健作が決めることだよ。かろうじて言うならどっちを生涯愛せるか。それを物差しにして決めたらいいんじゃないか?」


「B子かな…
でも、B子とエッチしている時は必ずA子の身体が思い浮かんで恋しくなる。俺はこういう思いをするのが辛いしB子にも申し訳ない気持ちになる」


健作が続ける。

「世の中で結婚してる人ってどのように1人に決めたんだろうな。何が決め手だったんだろう。ちなみにお前は何が決め手だったんだ?幼馴染みってだけで結婚したわけではないだろう?」


「決め手という決め手はない。漠然とこの人とならこの先の人生を歩んでいけそうな予感がしただけだ。まあ、お互いのタイミングとかも多少はあっただろうけど」



「予感とタイミングねぇ」
フラペチーノのほとんどがなくなっている。
容器の底に生クリームが皿洗いを終えた後の流しの泡立った洗剤みたいになっている。
まだ、彼にとってはきれいに片付けられないでいる問題のようだ。