あと1週間で死ぬことになった紗羅への説得が始まって2時間。
紗羅の意志は固く揺らぎがないようだ。
紗羅いわく、死は最大の逃げでありリセットであるらしい。それもいい意味での。
借金から逃れるためには死ねばいい。
この世に不満があるなら死ねばいい。
なぜ、紗羅があと1週間の猶予を設けたのかは分からない。
ただ、1週間後の夕方には線路に飛び込むそうだ。
死が楽しみらしい。
あと1週間で死ねると思うとすがすがしい。
「何がそんなに苦しいの?何も死ぬことないでしょう?」
亜香里がヒステリックに叫ぶ。
しかし、そんな声も紗羅の身体を囲う見えぬ鉄壁がかき消す。
何を言っても無駄なんだ。
彼女は死を決意した。
もうどうしようもないことなんだ。
身代わりになることもできないし。