0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

眠らない車、カーシェア

ときどき、警察から利用者情報の開示を求められる。
個人情報保護法とか言うけれど、そんなもの刑事には通用しない。

主にカーシェアサービスを展開する会社に入ったのは車が好きだったからだ。
単にそれだけの理由である。
その頃はまだ、広告にお金をかけて頑張って宣伝しているような状態だったからそのことを思うとよく普及したなと感じる。
車を持たない選択肢は時代の流れなのかもしれない。


カーシェアに使う車の点検や整備は別会社に下請けに出している。
僕の主な仕事はマネジメントだ。
どのようなサービスで顧客の心を掴むか。
日々、そのようなことを考えている。


僕にはこの前できたばかりの恋人がいる。
それまで付き合っていた彼女とは喧嘩別れをした後、音信不通だ。
今できたばかりの恋人はカーシェアのオペレーターをしている。
会社ぐるみの飲み会で意気投合した。



「最初、電話に出た時、カーシェアの使い方を教えてほしいと言っていたのに、説明をはじめると「そんなことは分かっている」って怒鳴りだしたんです。
別の日には車のドアが開かないって甲高い声で女性が叫んでいたり、怒鳴り声が聞こえてきたり…」


その飲み会で彼女はオペレーターの過酷さを淡々と語っていた。
しかし、見た目の華やかさからとてもじゃないがストレスを抱えているようには見えなかった。



休日の夜、彼女と束の間のディナーを終え、同棲するアパートに戻る。

僕が切り出す。
「この前、警察から電話がかかってきて、○月○日○時から○時の間に○○付近で利用された車の利用者情報を教えてくれって言われたんだけど、その車、その時間帯だけ搭載されたGPSの位置情報から姿を消しているんだよ。こちら側のシステムの不具合も考えられるから念のため専門の会社に調べてもらったけど異常なしだってさ。
不思議なことが起こるもんだよな」


彼女は言う。
「私も似たようなことならあるよ。この前、仕事中、無言電話がかかってきたんだけど、切ろうとしたら最後に女性の声で私の下の名前を叫んだの。その時はなんで下の名前が分かるのかびっくりしたわ」


カーシェアの仕事をしていると、ときどき不思議なことが起こる。
翌日、仕事場に向かうとまた警察から電話がかかってきた。


「○○さん、ちょっとこの前起きた殺人事件の件でお話を伺ってもよろしいですか?」