0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

タワマン身勝手男たち5

自分の目をつけた女性に限って男が群がる原理は自分の場合だけなのだろうか?
自分の目をつけた女性が男たちにとって、とても価値あるようにみえるのだろうか。
めったに口説かないあいつがアプローチする女性。
きっとすごいに違いない。
早く奪ってしまえ。


いつだって僕と彼女は広告塔だ。
その広告を見て気に入った男が寄って来て彼女という商品を購入する。
あんなイケメンが身につけていた女を自分も現実に手にすることができる。
自由にすればいい。


その日起こった出来事や過去に見たものなどが組み合わせって夢に出てくることはよくある。
ゆかりからの突然のラインに週刊誌の写真と金田繁一の名があったのはただの夢だった。
そして、僕が狙う女性ばかりを男が横取りしていくのも。
それら全て夢だ。
目が覚めて気がついた。
自分が意識してたから夢に出たのだろう。
カシオはひとまず冷蔵庫に冷やしてあったミネラルウォーターを喉に流した。
ラインひとつ来てやしない。


あれは週末の深夜のことだった。


あの日は挿入した時に引っ掛かりを感じて少し痛かった。だからコンドームを被せた時に陰毛が絡まってしまったのかと思っていたが、ピストンを続ける内にその違和感は消失し、彼女の陰部に馴染むようになっていた。
カチカチに固まった冷凍の海老が熱を帯びた台の上で柔らかくなっていくように固まって閉ざされていた彼女の陰部は次第に湿り気を帯び、柔軟性も増し、僕を優しく包み込んでくれていた。
そして僕は彼女の柔らかい裸を両手で包み込んだ。下半身も上半身も全てが隙間ひとつなく密着していてほどよい熱を漂わせている。
分子と分子が結合して新しい物質に変わるように僕と彼女という二者はセックスによって一心同体となり、上下左右に揺れながら心臓まで繋がっているかのような錯覚を覚えた。
正常位という彼女が受け身の体位なのに僕が陰茎から流す体液を積極的に身体全体で絞り出そうとしているのが感覚的に分かる。
押したり引いたりする動きをする時にガムシロップのような液をまとわせ、時に放ちながら奥の奥まで引き寄せられ吸い込まれるのだ。
深夜0時の揺れるベッドに漂うじんわりしたものがそろそろ終末を迎えようだなんて。






彼女の名前はゆかり。
相手の男性はカシオと言うらしい。
どうも、この2人のもとに私は産まれる予定らしい。
髭もじゃでほうれい線がみずみずしさとは疎遠になったのを線で書き写したような表情をしたじいさんが緑の細長い杖を持ちながら私たちの世話をしてくれているけど、みな、躊躇なく並べられた真っ黒な深くて丸いマンホールのような穴に身体ごと入っていく。
じいさんはそんなマンホールを覗きながら、行ってらっしゃいとでも言わんばかりだ。
私は悩んでいた。
じいさんは食べるのには困らない程度の生活ができると言うけれど、そんな世界って今より幸せなのだろうか。
そして、じいさんは私たちの前世を知っていて、前世で悪いことをした人には強制的に不幸な来世を歩ませ、前世でいい行いをした人には来世ではもっと幸せな人生を送らせるようにするらしい。ちにみに今、そそくさと穴に頭から突っ込んで行った丸坊主の小柄なきつね顔の男の子は前世で悪事を働いたからあの穴の向こうにはその代償が待ち受けているそうだ。そういう権限がじいさんにはあるのだという。もちろん、男の子はそんなこと知るよしもない。じいさんはなぜ私にだけそうしたことを教えてくれるのだろうか。それも分からない。いずれにせよ、私たちは何かしらのアクションを起こさなければならない。ただ、じいさんの所でのんびり過ごすのもありだとじいさんは笑う。その際、さらにほうれい線が深く刻み込まれる。
食べるのに困らないということは前世で平凡な人生だったということなのだろうか?
少なくともあの男の子よりはずいぶんとましだ。
それにしても母親になるであろうゆかりの顔があまり気に入らない。
性的アピールのための白い処理された脇に梅干しの種のような乳首。彼女のみずみずしさは今が頂点で、どうせ私が産道を通過する頃には梅干しの実のごとくしぼんで水分も抜けているのだろう。
そして、カシオの少し気取ったような言動も気になる。
言動とは言っても彼の心の中の言動だ。表には出ない彼の裏の思想だ。
どうやらカシオという男は実力を過信しているらしい。
持っている時計のブランドで他者を判断する性格のようだ。
このような性格なら、きっと近所の平凡な家庭を何かにつけて見下すような薄っぺらい家族になるに違いない。それは健全な競争とは程遠い歪んだものとなるだろう。
そしてカシオは女癖が悪く、ゆかりはお金のことしか頭にないのも気にかかる。
どこからどこまで品がないのだろう。
こんな家庭に産まれて食べるのに困らなくても果たして本当の意味で幸せになれるのだろうか。






射精して抱き合うだけ。
愛しい気持ちはある。
でも、それはセックスありきかもしれない。
もちろん、これは他の女を抱いてる時だって同じだろう。
そもそも女なんてみんな似たりよったりで個性的な奴はたいてい変な奴にしか見えない。
みんな男受けするようなメイクとファッションとスタイルで男を捕まえるだけ。
なんの面白みもない。
求められている形はだいたい決まっている。
不幸な者はそこから少しパーツがずれているだけかそもそも市場に流通しない粗悪品だけだ。整形でも何でもしたら簡単に変われる。きっと。
それに、だいたい女を抱けば抱くほどみんな同じように見えてきてつまらなくなるのだ。
多分、セックスに個性なんていらないのだろう。
多様性の社会にして求められるのは誰もが抱きたくなるような普遍性。
それは馬鹿らしくて皮肉な話だと思う。






ゆかりには飽きた。
僕はA子を抱いている時に何となくそう思った。
もう潮時だ。
ゆかりもどこか冷めた目で僕に接している。
あまり目を合わせてくれないし、笑顔も明らかに減っている。
ただ、皮肉なことにスポーツとしてのセックスという観点から考えればゆかりとの連携プレーは他の追随を許さないものとなってきているように感じていた。それは単に2年という歳月がそうさせただけではない。
僕らはもはや「セックス」という種目を会うたびにこなしているだけのカップルとなったのだ。
最大の性的快感を1回戦序盤で狙うことができる。オリンピックに出場するわけでもないのにハイスコアを毎回叩き出せるのだ。
それぐらい僕らは性的快感に対する向上心があったに違いない。







セックスをすればするほど飽きてくるのが男なら、セックスしか求めてこない男に呆れてくるのが女というものか。
女としては早くオリンピックという人生最大の行事に出場したいということなのだろう。
練習試合ばかりではいずれにせよ飽きがくる。
それは僕も同じだった。






A子には恥じらいがあって、それが僕を興奮させた。
行為の後、スマホを触る彼女の後ろから身体のわりに大きなお尻を触ると「もぉーっ」てやたら語尾を伸ばしながら嬉しそうに恥じらう。
それが可愛い。
そして彼女は母性本能が強かった。
僕が「ずっと会いたかった」って言いながら抱きつくと「可愛い」って幼稚園児に接するようなトーンでよしよしと背中を撫でてくる。まるで本当に幼少期の自分に戻ったようになる。
このようにA子は僕をとても可愛がってくれた。
一方で、ゆかりは常に愛情に飢えているようだった。







そして、A子の性器はとてもおもしろかった。
中に入って動かしているとざらざらしたものに当たる感覚を覚える。
しかし、それが気持ちいいかと言われればそうでもない。
気持ちいいと言うよりは飽きない性器のような気がした。
まだ開発されていない発展途上国のようなもの。
対して、ゆかりの性器はきちんと開発されていていつの日も安心感があった。
僕にぴったりフィットして優しく包み込んでくれるようなものだった。
そしてA子の性器はまだ僕の性器を本当の意味で受け入れられておらず、まだ情報収集の段階にあるようだった。そして伸びしろがある。だからわくわくする。
いきなり膨らんだり濡れたり乾いたり試行錯誤しているのがよく分かった。
どうすれば僕の性器に一番フィットするか。
そんなことを模索している性器に感じられた。
また、僕だってまだA子の体内で冒険中のような気がした。




僕を見つめるA子の力強い瞳はそれだけで僕を興奮させ、愛しい気持ちにさせる。
ベッドの上で女の子座りしながら「したいんでしょ?」って目でじーっと見てくる。これだけ目を合わせ続けてくる女性は他にいなかった。
そして、それがこのままずっと離れたくないという気持ちにさせた。
いつも行くラブホテルまでの道中、僕らは恋人繋ぎをしながらゆっくり歩いた。
意外と恋人繋ぎをしているカップルは少ない。
ましてラブホテルを出た後となればもっと少ない。でも、僕らはラブホテルを出た後も恋人繋ぎをするぐらいラブラブだった。
手と手が繋がれば心も繋がる。
デリヘルの送迎用の車も、カップルもみんな僕らを温かい目で見守ってくれているような気がした。
いや、そう思いたかった。きっと、嫉妬や、やっかみも結局は自分が満たされていないからだ。
他人の幸せを喜べるのはまず自分が幸せでなければならない。それで初めて他人を祝福できる。
少なくとも僕たちがいるラブホテル街にはおおむね幸せな人たちで埋まっているようだった。
または幸せだと思いたい人たちで溢れていた。




A子とのフィーリングの良さはきっと必然だ。
二人を引き寄せた守護霊が宿っている。
ここに何の不満もない。
問題はどのようにゆかりを振るかだった。
自然消滅でいいのか、きちんと会って別れを告げるべきなのか、それとも、このままの状態で時々でも会うのか。



A子と最後までした時に、途端にゆかりに会う必要性を感じなくなってしまった。
そして、ゆかりに足りないのは恥じらいや刺激や初々しさだと気がついた。
そしてA子はその全てを兼ね備えていた。


A子へ

拝啓 LINEの通知音が僕らの行く手を阻むような感触を覚えるけど、君からしてみればそれはただの雑音で気にも留めないだろう。
僕はスマホの電源自体を切っているというのに。




君には何度か好意を伝えた。
「好きだ」と言った。
「付き合おう」と言った。
いろんな場所に行きたいと言った。






その度に少しはにかんだり、にやけたりする君が愛おしかった。





ベッドが上下に揺れている。
そして、君から温かな体温が感じられる。





時折、君は僕のことを強く抱きしめる。
だから僕の身体が君の深みにはまっていく。




でも、何年かして、また同じように「君」を置いていくことになるのかもしれないと今から少し不安でいる。
そして、逆に君がある日突然、僕を置き去りにするのかもしれないとも思ってしまう。
だからゆかりとの関係をどうさせればいいのか分からないでいる。
でも、今はA子を抱く気力しかない。
いくら惰性でも同時に2台も走らせられない。
A子と漕ぐ自転車がどこに向かうのか、パンクせず走らせることができるのかは今のところ分からない。
でも、惰性で来たゆかりとのサイクリングはここで最後かもしれない。
A子の自転車に乗っかってもいいかな?




ゆかりへ

拝啓 …
























はじめは赤の他人で街中ですれ違うことすらなかったかもしれないのに、こうして出会って話をして仲良くなってエッチしてひとつになる。
ここまでするとちょっとした癖や言動までもが相手に似てきて、それが続くと表情や、ぱっと見た印象までもが似てくる。
エッチって体液を出すだけじゃない。
相手の中身を取り入れる行為でもあるのだ。




もう僕にゆかりの面影はなかった。
A子とエッチした瞬間から僕はA子の内面を取り入れてしまった。
逆にA子も僕の一部を吸いとってしまった。
エッチした瞬間から僕はA子の半分になり、A子も僕の半分となった。
僕がいなくてもA子がいれば僕の魂はそこに宿っているし、A子がいなくても僕がいる限りA子の存在はきっとある。






そう考えると、不倫がバレるのは必然なんだと思った。
全然知らない人の一部が宿ってしまっているのだから。
たとえデータを削除しても匂いを消しても、洗濯してもアリバイ工作しても、宿ってしまったものをどうすることもできない。





僕はただただA子の白い肌に触れていた。
そして、その時、ゆかりの表情がフラッシュバックした。