0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

タワマン身勝手男たち

この窓からだと人も車も鉄道も、みなちっぽけに見えてしまう。
ないものねだりな性格は誰に由来したのだろう。その窓を眺めながらカシオはふと思った。
脚のきれいな女性、ぱっちり二重の女性、胸元に思わず目がいきそうになる女性、白くて柔らかそうな二の腕、さすがにタワーマンションの最上階からだと確認できないか。
そして地上にいた時もその全てをひとつひとつ手にしたいと思っていた。
でも、なぜだろう。いざ手にしてみると今度はそれが億劫になってくる。窮屈になってくる。抜け出したくなってしまう。毎日の同じ景色がなんだか物悲しく思えてくる。
ゆかりとセックスをして1ヶ月ぐらい経過した。
ゆかりは僕の手にしたいもの全てを兼ね備えている。だけど、毎日セックスをしていると破局するだろうなとカシオは思った。
だから、あえてセックスの頻度を、つまりは会う回数を減らした。ゆかりがそれをどう思っているかは分からない。分かりたくもない。
その結果がフラれるというものであっても致し方ない。
少なくとも僕の方が窮屈な思いをするのが嫌だった。ゆかりからすればなんて身勝手な男だと思うだろう。でもこちらが尽くしても他の男の影がちらつくことだってあるのだから、お互い様だとカシオは言い聞かせた。
「どんな恋愛でも片方のエネルギーだけが勝ってるんですよ」と和田玖未子は言った。
重量配分で考えた時にちょうど五分五分になっていることがないのだという。うまい具合に釣り合わない。どちらかが多少の我慢や妥協をしている時があると和田玖未子は繰り返した。
自分が不満を抱いている時、相手は不満など抱いていないかもしれないし、自分が幸せだと感じている時、それを相手が同じぐらい共有できているとは限らない。だから、いくら親しくなっても相手を尊重することが大事だと。
和田玖未子は商業ビルの一角で占いをしていてその時に言われたことをカシオは思い出した。
「付き合っている=どちらも幸せ」だと思っていた当時の自分にそのアドバイスは理解できなかった。だから、その時に和田玖未子がひいたカードのイラストの燃え盛る炎と共に焼却された。
でも今になってそれが分かってきた。
自分がその当事者だからだ。
ゆかりと出会った当時は本当に僕はずっと興奮していた。ゆかりのことで頭がいっぱいだった。でも、月日が経過し、燃え盛る僕の炎は徐々に勢いを弱くさせ、今は線香花火のようにかろうじて生存している程度だ。
反対に、ゆかりの僕への想いは日に日に増してきているような気がする。
それは別れ際、ゆかりが次会うことを確認してくるからだ。
でも、次会うのが1週間もしないうちだったら僕はそれを億劫に感じるだろう。
それをうすうす分かってなのか日時を指定してくるようなことはしない。あくまでゆかり自身が空いている日を示してくるだけだ。
でも会うのは1ヶ月先になってしまう。ゆかりがその時に示したいくつかの空いている日など、とっくに過ぎ去っている。
でも1ヶ月ぐらい会わない時間を作らないとゆかりへの想いが湧いてこないのだ。
仮に1週間に1回会ったとしても、それが義務感でのものなら自分自身が辛いし相手も果たしてそれで楽しいのだろうか。
毎日なんてもっての他だろう。
カシオは考えた。
想いが湧いてきて会いたくなった時に会う。そしてセックスをして抱き合う。そしてまた1ヶ月の空白を作る。そして会う。その繰り返しが1番安定するような気がしていた。
1ヶ月ぐらいすれば自然と会いたくなってくるのだから。