0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

タワマン身勝手男たち2

一昔前ならイケメンなだけでもてはやされた。
今はどうか。
イケメンなだけでは一歩及ばず状態になってきている。
イケメンな上に資産家とか何か特別な才能がないとモテない。
テレビを見てみればそれがよく分かる。
たとえば最近のJポップは歌が上手いのはもちろん、ビジュアル面でもレベルが上がってきているように感じる。
昔のように歌が上手ければブサメンでもいい、イケメンなら歌が下手でもいいというのは通用しなくなっている。
なぜこのようなことが起きたのかカシオは考えた。
その理由はたったひとつ。
素人のレベルが上がってきているからだ。
「歌ってみた」に代表されるようにネットの普及が誰でも芸能人になれる構造を作った。
そしてネットの批判コメントを真に受ける内に否応なしに本人のレベルが上がっていく。
「もっと痩せたら?」「歌下手じゃない?」
そんなお叱りの言葉をひとつひとつ丁寧に承る内に気がつけば芸能人顔負けのレベルになってしまったというのが本音だろう。
そうなると相対的に芸能人に求められるレベルが上がってくる。
ネット配信勢がアマだとすればテレビ出演勢はプロだ。
プロがアマよりレベルが低ければメンツが立たない。
今の芸能人たちは歌が上手くてイケメンでお芝居もできておもしろくもなければならないのだ。
みんな必死に痩せてボイストレーニングに励んで脱毛して美肌パックをする。
場合によっては美容整形の力も借りながら。
この業界はどこまでレベルが上がっていくのだろうとカシオは窓の外を眺めながらふと考えた。
どこまでいけばみな満足するのだろうと。






さっき駅まで見送った彼女も彼女で体型を維持するのに必死なのかもしれない。
太れば見放されるだろうと。
いや、そんなことはないよ、と言えない自分がいる。
ただでさえマンネリで他の女がたくさん寄ってくるのだから。
蜜蜂が花の蜜に吸い寄せられるように。
カシオはコーンスープをひとくち飲んだ。窓の表面には少し水滴がついている。
空模様はフラれた女性の悲しみみたいだ。
カシオは今のようにモテなかった日々を思い返した。
それは記憶としてそこにあるだけで単なる勘違いだったかもしれないし、今、モテているというのも実は勘違いかもしれない。
ただ、いろんな努力をして今があることは間違いないと思う。
カシオはテレビをつけ、ちょうど今人気のアーティストが歌唱しているのを生で観ることができた。
歌が上手くてイケメンな上に芝居もできる。
なのに彼は失恋ソングを切なげに歌っている。
ただ上手いだけじゃない。声に柔らかさやほどよい抜き加減が感じられ、心が揺さぶられる。
これは芝居ゆずりの歌声なのか。
彼の歌唱が終わり、彼の顔がアップに映された。
肌が白くてきめ細かくフェイスラインがシャープだ。
画面越しだと多少太って見えるというのにこれならば実際はもっと痩せているのだろうか。
そんなことをカシオは思った。
そしてカシオの彼女に心揺さぶる何かが不足していると考えた。