文学
一昔前ならイケメンなだけでもてはやされた。 今はどうか。 イケメンなだけでは一歩及ばず状態になってきている。 イケメンな上に資産家とか何か特別な才能がないとモテない。 テレビを見てみればそれがよく分かる。 たとえば最近のJポップは歌が上手いのは…
この窓からだと人も車も鉄道も、みなちっぽけに見えてしまう。 ないものねだりな性格は誰に由来したのだろう。その窓を眺めながらカシオはふと思った。 脚のきれいな女性、ぱっちり二重の女性、胸元に思わず目がいきそうになる女性、白くて柔らかそうな二の…
彼女とは半年ぶりに再開することになった。 待ち合わせ場所に現れたのは以前と変わらない彼女、ゆずという女の子だった。 小柄で丸顔で童顔だ。 「会えると思ってなかった」 彼女は言った。 「ずっと会いたいと思ってたんだ」 僕が言う。 そして、僕と彼女は…
昨夜は全く眠れずに休日がやってきた。 ここ最近、自粛のせいか生活のリズムが乱れている。 ロレックスのサイトを眺めていると新作のモデルがいくつか掲載されていた。 全く眠れなかった昨夜からの「今日」という休日は変にテンションが上がる。 普段、しな…
蓮華寺昭二。71歳。 時刻は午後11時。 個人タクシーの運転手をしている。 働く時間は主に夜から明け方にかけて。 仕事柄、山道を走ることが多い。 というより山道をよく行き来するのだ。 乗せるお客さんはみんなあの宿を利用している。 錆びて茶色になったの…
きめの細かい柔らかな白い素肌を撫でると小さな無数の粒々が皮膚からじわりと浮き出した。 鳥肌を立てるのは恐怖の時だけじゃないのだと僕は知る。 そして背後から抱きしめる。その抱きしめた僕の両腕が少しずつ彼女の胸元へと降りる。 ブラジャー、洋服とい…
その夜、いつも行くバーの店員が(愛想はなかったが客が少ない分、仕事は丁寧だった)急によそよそしくなって、それに呆れた僕はバーを出た。 「残念です」 そう電話を入れ、そのバーと完全決別した。 この時、バーの店員は若干動揺しているようだった。まさか…
花火のない夏なんて考えてみれば初めてのことだ。 僕にとって花火は夏の風物詩で花火を通して様々なインスピレーションを受けてきた。 電車の窓から偶然、目撃した花火も、観覧席の一番前を陣取って眺めた花火も、そのどれもが僕の心を打ち、糧となっていた…
「だから売り上げの推移を聞いてるんだ。上がったのか下がったのかどっちだ?」入社2年目の斎藤はスマホの向こうからおそらくは唾を飛ばしながら叫んでいるエリアマネージャーの岩下の問いに静かに答えた。「低迷しています」その後、吐き捨てるようなため息…