「これロレックス?」
「そうだよ。エクスプローラーっていうスポーツタイプのものだよ」
聖子は僕の右腕にそっと手を触れ、そのまま指先をロレックスに滑らせた。
「この前、職場で検温したら37℃越えてて、焦った
。あの非接触式の検温計、絶対に狂ってるよね」
僕は聖子のお尻を撫でながらうんうんとうなずく。
「もしも、相手の心の中を計れたらまずい?」
「どういうこと?」
「相手の好意度とか反対に悪意度とか」
「ちょっとまずいし、ちょっと楽しそうかも」
「じゃあちょっと計っちゃおうかな」
そう言って聖子は手のひらを僕の胸に当てて沈黙した。
「おもしろい心の中をしてるね」
「どんな風に?」
「それはあなたが一番分かっているんじゃないの?」
「僕が聖子のことが好きってことが?」
「うん、3番目にね」
「どういうこと?」
「私は3番目の女なのよ。昔からそう。今となってはもはやそれを望んでる。あなただって分かってるでしょ?」
「どうなんだろう…でも、少なくとも聖子の指摘は当たってる…はっきり言うよ。誤魔化しなんて利かないだろうから」
「私はいつもそうだから。あなたにとって私は3番目の女なのね?あなたにとって私はどんな立ち位置なの?」
「癒し系だな。人生を共に歩んだりあれこれ語るにはあまり適していないし、かと言ってた身体がピカイチというわけでもない。ただ、たわいもない話をして身体を重ねる。それも気分がのった時にね。そんな女性が聖子だよ」
「私はあなたにとって存在価値がないわけではない。息抜きのための「癒し」という価値を提供できているわけね?なら良かった」
聖子の胸が僕の胸元に当たり、太ももと太ももは複雑に絡み合っていた。
完