0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

彼との半同棲(小説)

上京して2年が経過しようとしていた。
就職した広告代理店は上司の軽いセクハラ発言を抜きにすれば比較的働きやすい職場だった。
実家の母はよく野菜や米などを送ってくれる。
段ボールに貼りつけられた伝票の母直筆のサインを見るたびに帰省した気分を味わえる。
私が住んでいるアパートはワンルーム
セパレートにはこだわった。
セパレートであれば部屋の広さにはこだわらなかった。
最近できた恋人と半同棲を始めている。
彼は同じ職場の同期だ。
週の半分を私のアパートで過ごす。



「職場って結局、長が大事だと思うんだ。その長がしっかりしていなかったら誰も付いていかない。
なのに、今の職場ってまさにその残念な例だと思うんだ。ほら、新人研修の時に受付してた野原さんって覚えてるだろ。あの頭の禿げた。意外に歳は若いらしいんだけど。
でさ、今の営業部営業推進課の課長があの野原さんなんだ。あの人、人をイライラさせる天才というか、いちいち余計なことをぐちぐちぐちぐち言っては相手を不快にさせるんだ。そのくせ若い女子社員にはプレゼントを渡したりして、一番ダメなパターンに正直見えてしまう。
つい最近までは、課長補佐の秋山さんがいろいろきめ細かくフォローしてくれてたからやり過ごせたけど秋山さんが異動になってからはもう職場の環境自体が嫌になってきた。
本当にどうすればいいんだか」


午後11時を過ぎ、今日を締めくくる民放のニュースが流れ始めた時、同じ缶チャーハイを私たちは手にしていた。


「私は経理だから営業部のこと詳しく把握していないけど、そんなことがあったんだ。野原さんなら私の記憶にもある。確か、笑顔が素敵で優しかったと思うけど」


彼はそれを聞いて眉をひそめた。

「なわけあるかい。いや、あるな。女子社員には優しいからな」


その時、彼のスマホの着信が鳴った。


「もしもし、」


「えっ、マジか」
「とっ、とりあえず、一旦切るわ」




「誰からの電話?」


彼は困った顔をしてうつむいていた。
しかし、私がいくら尋ねても彼は答えなかった。


やがて、チャーハイの缶は中身を失い、ごみ袋行き間近となった。


「隣。隣に住んでる人。隣に住んでいる人が今朝、自殺したらしい。それを友人が教えてくれた。
その自殺した人、しょっちゅう俺のドアを叩いて
「お前も逃げた方がいい」って叫んでいたんだ。
かと思えば、「盗聴しないでください」、とか言って怒鳴りこんできたり。大家さんに相談したんだけど強制的に退去させるのは難しいって」


彼は淡々と語り始めた。
私はそれを聞いて、母にも似たような症状があったことを思い出した。


母は本当に時々、別人のようになって「伏せろ、伏せろ」と私に言ってくる。
その時の母は真剣そのもので私を守ろうとしているのが伝わってくる。
だが、最近、父に連れられ何かの病気だということが分かった。

それを彼に打ち明けた時、彼は「お前も案外大変なんだな」と笑った。